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いつまでも若いまま 「自覚と認識」の無い高齢者 茅ヶ崎事故より 

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初代プリメーラ(P10)で限定800台の赤とのこと。
自慢でもあり高慢の象徴でもあり・・・。


私たちの年金で年寄りは飯を食って、医者にかかって、車を買い、運転して人をころす。
素晴らしい社会。

皮肉はさておき、パトカーか警察関係車両か、その後部座席に連行されている画像に映るその容貌。
運が悪かった位の反省皆無の表情が、容疑者の頑固で慢心に満ち溢れた生きざまが垣間見える・・・と言ってしまうのは、ちと言い過ぎかな。

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神奈川県茅ケ崎市の国道で通行人が乗用車にはねられ、女性1人が死亡した事故で、県警茅ケ崎署は28日、車を運転していた同市の無職、斉藤久美子容疑者(90)を自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで逮捕した。同署によると、斉藤容疑者は「赤信号と分かっていたが、誰も横断歩道を渡り始めていなかったので行けると思った」と供述している。

 逮捕容疑は28日午前11時ごろ、茅ケ崎市元町の国道1号の交差点で、横断歩道や付近を通行中の4人をはね、自転車に乗っていた同市の松浦久恵さん(57)を死亡させ、39~63歳の男女3人を負傷させたとしている。
引用元:headlines.yahoo.co.jp(引用元)

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親鸞曰く「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」
善人でさえも往生できるのだから、悪人は必ず成仏が出来ると言う、いわゆる「悪人正機」です。

己の罪を自覚して反省が出来るならば、その人は普通の何も考えていない人よりも心の成長が出来るであろう。さらに自分の罪のための反省から奉仕(ボランティア)が「継続」出来たのならば、自分の犯した罪以上の善行を成すことも可能・・・という解釈。

このケースの場合に「悪人正機」を当てはめるのはちょっと異なるかもしれませんけど。
浄土真宗の人に怒られるかな?


「己の罪を自覚して反省できるのならば・・・」という「認識と自覚」という点では、己の年齢、体力、知力、衰え、現在の社会的立場、人間関係、過去と現在・・・そういったものを認識し、自覚出来ているかどうかという点は老人に今一度問うてみたいところです。


そうだとして、このBBAにそんな時間と知性が残っているのか?

それで被害者とその家族はどうなる?


といって、仮に死刑にしたところでどうなるわけでもない。
何とも言えないやるせなさ。

家族や近しい者がこのような老人に被害を受けた場合を想像するとあまりにツライ。私たちには「老害!」と非難することしかできない。したところでこれまたどうなるわけでもないけれど。



もっとも、「良心」があれば「赤信号だけど行けると思った」とは思わないだろうし、何より、家族や今後を考えてクルマを手放す選択をしていた可能性もある。ひどい「執着」があったことは間違いないと思われる。

安楽な生活の中で「もっと、もっと」と執着が生まれ、自分にとっての価値基準も天井知らずです。人生について考えることなど忘れ、慢心し、感謝などどこ吹く風。
この人に限らず、そんな年寄り、多いと思います。

そして自分が生きたすべてが、自分に反転・反射する、という話もあります。
自分が年を取り過ぎていて「人として罪も償うことができない」というとてつもない絶望を味わうことになるのでしょうか。

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その一方。
超高齢社会で、選挙権を持つ老人層。そしてその予備軍の団塊の世代。
これらを敵に回す可能性のある免許の更新問題などはできれば触りたくないんじゃないでしょうか。


「医療」と「介護」、「他人とのふれあい」でいくらでも国を売るご老人も多い中、若者との対立をあおる報道には注意が必要です。


多くの年寄りが慢心し、認知症になり、依存し、害悪となり果ててしまう。彼らも若い頃はそう思わなかったでしょう。それほどまでに、「死ぬまで”自覚と認識”を続ける」というのは大変でツライ事だと思います。

今の若者は、「このような年寄りにはなるまい」と反面教師で心掛けるくらいしかないでしょうが・・・いや、じりじりとした世界情勢の中、この局面を乗り切った若者ならばこの負の連鎖を断ち切れると。

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「ゴールデンカムイ」より老・土方歳三。
五稜郭で戦死しなかった設定で、老いてますます盛んを地で行きます。
でも、やっぱり幻想なんですよね・・・。

もっとも、作中では若手の兵士にタックルをくらってマウントを取られる描写もあり、技量は衰えていないが体力的には劣っているという、それなりにバランスを考えて描かれています。


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「護衛艦かが」&「かが神社」見学してきました その3

誰が置いたか知らないが、ドールの「加賀」さんもいてました。
ぶろぐ かが 加賀さんIMG_4481.jpg

「艦これ」の加賀さんのドールがありました。
陸自の展示場所に、ちょうど「かが」をバックにして撮影できる場所に設置されてました。
どこかの有志の方?

太極拳 かが007kai.png
何だかんだで「艦これ」は影響力が大きいですね。




甲板を堪能した後は甲板の一部がそのまま下降するインボード式のエレベーターで再び格納庫に戻ります。
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降りた先の景色が何と言いますか・・・。

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まさに「ホワイトベース」の格納庫。

格納庫以外には行けないのですが、いろいろとみるべきものがあります。
横断幕などはあちこちでアップされているので省略します。


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これもかなり撮影されてましたが、「加賀」と「かが」の比較対象図なので分かりやすいのです。


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これこれ、こういうのがたまらないのです(笑)。


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ゴミ捨ての決まり等々。


格納庫内の物販はこの時点で1時間待ちだったので、さすがにスルー。
キャップとかTシャツなどですね。ちょっと欲しかったのですが、これ以上待つのは辛い。

さて、たぶん無理だろうなとは思っていましたが、金沢の一般公開時とは異なり、格納庫以外の艦内はやはり公開されないようです。
これもまた2万人中1人の自信ありですが、近くにいた自衛隊の方に

私「すみません。あのぅ・・・艦内神社ってありますか?」
自「かんない神社?? ・・・ああ、アレはこの下ですね」

(やはり乗組員たるもの、疎かにしないのですねぇ!)

私「そうです。白山ヒメ神社から分霊された・・・」
自「ありますねー」
で、分かり切っていることを聞きます。

私「さすがに参拝は出来ないですよね?」
自「今回は申し訳ないのですが・・・」
私「いえいえ、とんでもない。ありがとうございました。」

つまらんことをお聞きして申し訳ない気持ちでいっぱいです。

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「かが神社」
白山ひめ神社公式ホームページより引用

分霊されている以上、艦自体がある意味、神域でもあります。訪れるだけで十分なのですが、いつの日にか参拝したいものです。



堪能したので艦を退出しましたが、まだまだ撮影のしどころはあります。
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間近で見るとグレーの巨大な壁ですね。
下ではチャプチャプと波の音が鳴っており、こんなのが海に浮いているんだ・・・と実感。さらに、(画像では分かりにくいですが)艦と岸壁の間にある「巨大なクッション」がインパクト大。


そのまま岸壁を艦首の方まで行き、撮影しました。さすがに艦首は収めておきたい。
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物販ブースと陸自の展示コーナーもあるので、まだまだ余韻たっぷりです。

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名前はよく知らないのですけど、仕上がりというか手入れの具合が見事です。モデラーなどもディティールの研究に来ているんでしょうね。

物販は押すな押すなの大混雑で「海軍カレー」や手ぬぐいは諦めました。隣の小さい方の物販ブースで部隊章?(赤で侍が刀を構えている)だけ記念に購入。


天保山の観覧車に乗って上から眺める人、渡し船に乗って全容を目の当たりにする人、とりあえずマーケットプレイスのテラスから見てみる人・・・降りてからも様々なアプローチができます。

時間は13時過ぎ。行列が駅まで続くことはなくなってましたが、それでも岸壁にはまだまだ人が長蛇の列です。

翌日の22日8時には大阪港を発ち、呉に向かうそうです。

海自、陸自の隊員の皆さん、お疲れさまでした。
訓練や任務のある中、仕事とはいえ市民対応大変だったと思います。



そうそう。2017年に「かが」就航時にちょっとだけ話題になりましたが、

「かが」と「いずも」と中央の浮き桟橋
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中央の浮きドックは旧日本帝国海軍・幻の空母「天城」を流用したものだそうです。

「天城」は空母改装中に関東大震災で被災し、廃艦が決まった空母「赤城」の同型艦。それにより廃艦予定だった戦艦加賀の空母改装が決定。
おばあちゃんと孫娘たちの対面というところでしょうか。



他国ではあまり考えられないことですねぇ。
目に見えない黙している存在をも無視せず、大切に出来る文化を持つ国。

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文武両元。
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「護衛艦かが」&「かが神社」見学してきました その2

「護衛艦かが」の艦内神社は白山ヒメ神社からの分霊であると書きましたが、当然、旧帝国海軍空母「加賀」も同じく白山ヒメ神社からの分霊でした。


ひっそりと建つ記念碑です。
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「航空母艦加賀鎮魂記念植樹」


神社の人でも知らないんじゃないか?という噂の記念碑(笑)。昨年の夏頃、白山ヒメ神社へ神恩感謝の祈祷に参った折に見てきました。もちろん事前にネットで情報を得てからのことで。
ちなみにここは参道の坂がとても独特なところです。


さて、仮にも御分霊されている「かが」の艦内に入る際には脱帽し、軽くお辞儀。
自分で言うのも何ですが、2万人来ていてやっているのは私ひとりの自信があります(爆)。

もちろん迎えていただいている自衛隊員の皆さんにも挨拶は欠かしません。

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『デッキサイド式後部エレベーター』
※この画像は借り物です

Twitterやブログで異口同音に書かれていますけど格納庫(ハンガー)は広いです。船の中とは思えない。
そこからサイドのエレベーターに乗って甲板へと上がるわけですが、このエレベーターは「デッキサイド式後部エレベーター」で、外側に張り出しています。


金沢での一般公開の時は食堂などの船内設備を公開していましたが大阪ではそれが無い代わりにこのデッキサイドのエレベーターに乗ることができます。岸壁側に張り出しているので、外でまだ並んでいる人たちを横目に上昇するのですが、まぁその稼働の静かなこと。30秒くらいで上がるのですが『ンゴゴゴゴゴン、ガッッシャーン!』とかではないのです。上に載っている人がぐらつくことがありません。

※たぶん一番遅い運転なんでしょうけどね


ブログ かが さいどIMG_4460.jpg
なんかもう訳がわからず(笑)、中途半端な写真しか撮れませんでした。


そして飛行甲板へ。
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今すぐに走りたいくらいの広さです。
ただ、甲板は滑り止めのためにかなり独特のザラザラ感があります。ちょっと日常では味わったことのないレベルの深いザラザラです。これまたサンダルやハイヒールは危険ですね。

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船尾で翻る日章旗を見て、「日本の宝」であると実感。
風がちょうど良いかげんで吹いていたので旗がとてもきれいでした。

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天保山の大観覧車と相まって、テーマパーク的な様相を呈しています。


甲板上では各種催し物や体験コーナーもあり、あちこちで行列が出来ています。ヘリに乗ってみたり、制服やヘルメットをかぶってみたり、子供に人気でしたね。
ちなみに大人に人気なのは「トイレ」。我慢していたのもあるのでしょうが艦内のトイレをちょっと見てみたかったんでしょうね。もちろん隊員が入り口でチェックされています。


これまた2万人中一人の自信あり(笑)。
「対ブラスト姿勢」
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飛行甲板上でやってみたかった「対ブラスト姿勢」。誘導や発艦の手信号よりもこれが一番わかりやすくて特徴的なんです。「トップガン」やら「ガンダム」やらでカタパルトオフィサーにちょっとした憧れもあったので、やってしまいました。

さすがに恥ずかしかったんですが、ここでやらねば「いつやるの?」なので、恥を忍んで自衛隊員の人に撮影をお願いしました。絶対にびっくりしたでしょうね・・・・・(恥)。

※対ブラスト姿勢
マーシャラー(空港内で飛行機の誘導する人)がジェットエンジンの排気ブラストに対して飛ばされないようにするために取る姿勢のこと。

参考動画。27秒あたりから。


オマケ。手信号など。
https://www.navysite.de/cvn/catcom.htm



続く。
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「護衛艦かが」&「かが神社」見学してきました その1

ブログ かがmaxresdefault.jpg
5/20、大阪港に入港した「護衛艦かが」を見学してきました。
結果からいうと「かが神社」は観る事すらできなかったのですが。


「護衛艦かが」が石川県・白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)の御分霊を受けた「かが神社」を有することを知る人は少ない。
はくさんIMG_3813.JPG
加賀ノ国 一ノ宮 白山比咩神社



いわゆる「艦内神社」であるが、神札を祀っているのではなく、分霊・分祀である。
受信するアンテナではなく、サーバーを置いているようなもの。
「かが」は白山ひめ神社の御祭神:菊理媛神(ククリヒメノカミ)の神格を有する。
ある意味において、艦内見学は白山比咩神社を参拝するに等しい。



神話において、黄泉平坂で争うイザナギとイザナミを和解させた神です。しかし、それ以外のエピソードはありません。日本書紀においてただ一か所のみの登場です。二人に何かを耳打ちして、消えるのです。

一説には、後に生まれる天照大神などの「未来の子供たち」の霊身であるとも言われています。
神話ではイザナミとイザナギの争いの後に天照太御神が誕生しますが、二人の仲たがいが治まらなけば、天照大神は生まれることが出来ないので。


太極拳 しらやまlogo.png

そう思いをはせると、いずも型2番艦「護衛艦かが」というのは実に感慨深いモノです。




昨年だったか「護衛艦しまかぜ」を見逃してしまい、後悔を引きずっているところに「護衛艦かが、大阪入港」の知らせがあり、満を持して臨みました。

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三代目しまかぜを観ることが出来なかった・・・

「スマン。20日は休むンで・・・」
私が去年、どれほど愚痴っていたかを知っていたのであっさりと(笑)。



今回はちょっと出遅れて0940頃に「大阪港駅」に到着。降りたらすぐに行列という素敵な感じです。



道々に自衛官の方(海自も陸自も)がおられて行列の人員管理。つまらんことを言ってたり、「こんなの知らなかった」みたいに愚痴っぽく言ってる、行列にも並んでいないオッサンやオバハンの相手もにこやかにしないといけない苦労、痛みいります。

途中で割り込めると思うな、老害よ・・・・。

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2時間ほど待って乗船。
時間がかかった原因として、撮影のために足が止まる、人員整理係が少な目ということもありますが、「手荷物検査」が意外と大きいんじゃないでしょうか。
コレをあまり知らない人が多く、バカほど荷物を持ってきていたり、ペットボトルの液体チェックのため、係員の目の前で飲まないといけなかったりで大変手間取っていたと思います。
怪訝な顔をしている人もいましたが、こういうチェックは至極当然のことですし、自衛隊のこの手のチェックはかなり”ザル”な方で楽なんですけどね。

ブログ かがIMG_4483.jpg
左側の白いテントが手荷物検査場。
この手前の折り返し点の渋滞がとんでもなかった。

逆に、「他国の人間」、アジア某国の人間が気になります。
その辺りも承知済みで、海上自衛隊艦艇や駐屯地や基地祭りは、国籍構わず公開だと思うのですが、
機密保持が徹底されていることを信じます。

一方で、日本にいる駐在武官(軍人)は式典などで公的に座乗するので、一般人に扮して調べる必要がそもそも無いとのこと。ただし、「日本国籍」や「日本国籍の者」を利用して調べようとする輩の方が危険なようですね。

ブログ かがIMG_4457.jpg
ここから乗降します。
タラップの滑り止め用の凸凹がスゴいんで、ハイヒールとかサンダルは本当に危険です。



今回「かが」を目の当たりにして「中国が空母を欲しがる気持ちが解る」です。
これは絶対に欲しくなるなぁ・・・・・・と、しみじみ。
おそらく現行の中華性空母は「いずも」「かが」の性能や美しさは足元にも及ばないと思いますが、
それでも数を重ねていつか作り上げると思います。彼らのその気持ちを押し留めることはきっとできません。
ならばこそ、日本も他国がぐうの音も出ないレベルの「正規空母」を作るべきだと思いました。

改造だなんて中途半端ではなく、「いずも」や「かが」からのデータを基にして・・・「しなの」か「あかぎ」でも?(笑) 

ついでに、第二次世界大戦の時点でアジアで唯一「空母」を保有しつつ、アメリカと激突できるレベルで運用していたことがどれだけスゴイかもよく分かりました。そりゃ白人も驚きますわ。


メディアから「凋落」といわれて久しい日本ですが、様々な制限やとてつもない制約がある中で、これだけのものが作れるのです。「護衛艦かが」にしても税金の無駄遣いとはとても思えませんね。


続く。
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「ゴールデンカムイ」 戦闘シーン篇 [ゴールデンカムイ]

「戦いはまさに一瞬」

それは単純明快に「生命のやり取り」でしかない。





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不意をつくのは基本中の基本。

〇とにかく「強い」存在は?

「ゴールデンカムイ」で何が強いって言ったら「ヒグマ」。これしかない。

「バイオハザード」シリーズのタイラントの如く突然出現して恐怖のどん底に陥れる(ストーリー的には自然な流れで登場する)。あらゆる道具、武器、知恵を総動員して対処するしかなく、正直、アシリパさんが居なければヤバいシーンもある(アシリパさんがいても決して楽勝ではない)。戦争帰りの人間ですら手を焼くのが「ヒグマ」。

ヒグマこそが作品における絶対強者。
ある意味においてそのヒグマをも内包した「自然の厳しさ」があります。
※「自然の脅威」は後述

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ヒグマに襲われた人が埋められています。保存食です。
触ったら最後、執念深いヒグマが襲ってきます。



移動速度は単純にウサイン・ボルトより速い。
破壊力と耐久力は言うまでもなく、あの図体で忍び寄る時には足音がしない。
ヒグマの頭蓋骨は硬く、銃弾が弾かれる、反れることがある。
※アイヌにはヒグマの頭部を狙う習慣がない

「止め足」など、不意打ちや逃走のためのテクニックを使うことがある。

※「止め足」っていうのは、ヒグマなどの大型野生動物が狩猟者を巻くために、途中で足跡の通り後ずさりして、付近の藪に飛び込んで足跡を消す行為。

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熟練の兵士が接近に気づかず、一撃を喰らう


柔道家・牛山がヒグマを投げ飛ばすシーンがありますが、野生のヒグマではなくアイヌの村で飼育されていた個体。大外刈りで投げ飛ばされたがダメージを受けている描写がまったく無い。
投げ飛ばされて斜面を転がり落ち、そのまま山に帰っていきました。


〇急転直下の戦闘描写。基本は「無音」。
ゴールデンカムイの戦闘シーンは見せ方やスピーディさには定評があります。おおよその流れとしては、一旦危機が去って登場人物がホッとしてる時にページをめくったら思いもよらない方向から第三の敵や動物(ヒグマ。最近ではクズリ)に突然刺されてる!といった感じの、ページめくると急展開、静寂から「無音のダイナミクス」・・・って感じのものが多いです。

そしてあまり複雑なコトはしないのです。特別な技とか奥義的なことはありません。
受けと突き。凸と凹。見ている方がわかりやすいのです。この応酬を反射神経と経験と勘を織り交ぜてやるわけですが・・・たいへん泥臭さがあります。しかし、「運び」のテンポ良さによってあっさりと仕上がっています。



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〇人間が簡単に死なない

日露戦争後の話であるため、いわゆる「戦争帰り」のキャラが多いので、刺されたり斬られたり等の痛みによって行動不能になるキャラは殆どいないのが特徴。どのキャラも、骨折や指などが斬り落とされたくらいでは戦闘を止めません。顔面が吹っ飛んだらさすがに即死ですが、内臓ドロリくらいでは即座に行動不能になることもなく、一矢報いることくらいは当然のようにやります。


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ヒグマに急襲された第七師団兵。モブキャラでもこれくらいのことはやる。



熱さも意地も関係なく、いわゆる「喧嘩」ではない(ある意味、狩猟にも似た)「戦闘行為」がそこにあります。



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実際問題として上記のように喉を斬り裂けば大量出血(出血性ショック)するので継戦能力はほとんどなくなってしまいます。屈強なロシア兵なのでこれくらいの勢いで行かないととてもとても・・・。

〇ちょっと脇道。「即時行動停止」の概念

拳銃弾程度における即時行動停止(≒即死)の条件として、「脳幹〜延髄(小脳の呼吸中枢)の破壊」があります。即死というよりは、「引き金を引く余裕すらなくなる」と考えてください。

ただし、これら中枢神経は喉の奥などといったように非常に狙いにくい部位にあります。ハンドガンやサブマシンガン等の低威力の弾丸では非常に狙いにくい部位です。しかし、狙撃などに一般的に使用されるライフル弾は、拳銃弾とは破壊力が段違いですので、頭部に当たりさえすれば、周辺部位ごとまとめて吹き飛ばして、即時行動停止させることが可能です。「周辺部位ごと吹き飛ばす」ことで脳幹〜延髄を破壊するのです。

これは日本刀の袈裟斬り等よる「多臓器不全による即時行動停止」と似た感じかもしれませんね

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ライフル弾はとにかく頭部が吹き飛ぶ。
中枢神経ごと吹っ飛ばす。そう簡単に当たりませんけど。

もちろん拳銃が弱いということではなく、相手の状況次第によっては命中しても行動を停止しないことがある、そういう認識が必要ということです。弾数は限られているのですから。

一般人の感覚だと「拳銃は怖い」「スゴイ威力がある」というものですが、あきらかに薬物中毒である、なんらかの精神異常か強迫観念状態である、自爆テロ等であれば、日本の警察官の拳銃程度では正直抑止力に不安感があるのは無理もない事かと思います。生存本能にスイッチが入った闘争モードの大型獣はスラッグ弾で心臓ごと吹っ飛ばされても100mは走ることができます。もちろん、一般人ならばアドレナリンが全開状態の人間ですら手に負えません。

作中では、日露戦争時に自爆特攻をしてきたロシア兵に対して30年式歩兵銃で撃っても撃っても止まらず、谷垣が焦るシーンがあります。逆に、ロシアのマキシム機関銃でバタバタ日本兵が倒れていくのが対比的なんですが。

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素晴らしい戦闘描写。辺見と杉元。

主人公の相手は快楽連続殺人犯・辺見さん。必死の戦いの中で”殺されたい”という変態さん。
従軍経験も無い一般人とはいえ、「本気」と「経験」はバカにできない。



〇まず「武器」ありき

さて、上記でいろいろ書いてきましたが、まず武器ありきの戦闘であり、「素手」というのは如何に無力、無謀かがお分かりだと思います。もちろん対人格闘の基本として、あるいは武器もない最悪の状況と仮定して、徒手空拳の技術を習得しておくのは無駄ではありませんが、いかなる状況においても素手でやろうなんてことは考えない方がいいです。こちらが使わなくてもあちらが使ってくることはよくあることです。
※法的な云々はちょっと無視してますが・・・。

ゴールデンカムイの作品中でも素手の闘争は数えるほどしかありません。
まともな徒手格闘は主人公・杉元と「不敗の柔道王」こと牛山辰馬の乱闘と「樺太篇」の”スチェンカ”でしょうか。前者の場合は壁を利用して受け身を取ったり、投げつけたりするなど環境利用はしています。何より、この”柔道王”牛山辰馬ですら常に拳銃を携帯し、通常の戦闘では必ず使用しています。もちろん人を投げつけるのは常套手段です。後者のスチェンカはロシアの伝統的な素手の殴り合いです。一種の試合&ゲームなので戦闘とはまたちょっと異なると思います。

面白いところでは杉元のドロップキックがあります。非戦闘状態からの不意打ちで、同時に様子を見に来た双子の兵士相手にちょうどよかったのでしょう(笑)。



あと、戦闘描写の展開にスピード感をもたらしているのは武器の持ち換え、相手の武器の奪取と利用の描き方ですね。相手との間合い(距離)による武器の変化、武器を奪ったり奪われたりすることによる状況変化など、瞬間々々、目まぐるしく変化していく戦いを楽しめることができます。


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二階堂が杉元の懐に入り込んだ後、すばやく銃剣を抜いて刺突。


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杉元がその銃剣を口で受けて奪取。続けざまに銃の台尻で一撃を喰らわす。


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二階堂が義足の隠し銃を撃とうとするが、それに気づいてへし折おろうとする杉元。
どんどんと距離が狭まっていき、ここまでくるとゼロ距離の組討ちです。

〇三十年式歩兵銃と三十年式銃剣が代表的な武器

作中に出てくる武器はやはり小銃(30年式歩兵銃)と銃剣(30年式)が多いです。一般的な格闘漫画の設定としては銃弾を避ける達人なども出てきますが、やはりそこは銃の利便性はやはり評価されるべきものです。誰も銃を甘く見ていません。

主人公・杉元はオーソドックスに小銃と銃剣がメイン。土方歳三は日本刀とウィンチェスターライフルで斬るわ撃つわの大活躍です。



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1890年代に開発・採用された三十年式銃剣。
本作の代表的な武器のひとつ。刃長はおよそ40cm。


〇「〇×流武術」はあまり関係ないかな?

ゴールデンカムイは戦闘シーンが一つの売りではありますが、「武術」の達人というのが牛山辰馬以外、ほとんど出ていません。強いていうなら従軍経験のある兵士ならみな剣道・柔道・銃剣術の経験者です。もちろん主人公・杉元も柔道は得意ですし、「樺太篇」では剣の腕前も披露しました。牛山辰馬は「柔道」で「不敗の牛山」の二つ名を持ちます。土方歳三・永倉新八がごぞんじ「天然理心流」です。鶴見中尉の部下で薩摩隼人である鯉登少尉が「自顕流」。「人斬り篇」の人斬り用一郎は、モデルが岡田以蔵という事を考えると「鏡心明智流」・・・ベースの実践剣術でしょうか?

とはいえ、いずれもそう強調されることもなく、ひとつの個性、特技として描かれています。

非力な家永は薬品やホテルの仕掛けを利用しますし、白石でさえも関節外しや仕込み釘などで牛山に対抗するなど、みんな自分の特性を生かしてやっています。

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交渉決裂とみるや機先を制する。幕末を生き抜いた「鬼の副長」は伊達じゃありません。


〇パワーバランスが絶妙であり、「神武不殺」の達人はいない

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マイナス30度の寒気が吹きすさぶ中で川に転落。
活動限界は10分。


先述しましたが絶対強者のヒグマを含む「自然」そのものがすべての上に存在しています。
杉元も自然の脅威(寒波や闇夜、蝗害)には独力では立ち向かえません。
冷血漢の尾形でさえ寒波には焦ります(八甲田山の惨劇を知っているから余計に、という考察があります)。



単純に耐久力と戦闘勘の良さ、生存本能なら主人公である杉元がトップです。ただ、銃の扱いはあまり上手くない。

おそらく格闘戦では最強と思われる「不敗の柔道王」の牛山ですが、単純な殴り合いだけなら牛山よりも強い囚人の一人・岩息舞治(がんそくまいはる)が「樺太・スチェンカ篇」に登場しています。

銃も剣も達人であり、指揮を執っても巧みな土方歳三ですが、室内戦において若手の兵士(二階堂)にタックルを喰らい組み伏せられてしまっています。マウントを取った後、兵士がよそ見をしなければどうなっていたか分からない描写ですね。

「敵に回すと厄介」と鶴見中尉が評価する尾形百之助は、狙撃や銃の扱い、兵士としての総合能力ではダントツですが、格闘戦では杉元に敗れて逃走しています。新任の鯉登少尉は剣術の達人であり、軽業師が舌を巻くほどの身体能力を持ちますが、敬愛する鶴見中尉がいないとあまり役に立たない的な描写があります。

「脱獄王」にして「役立たず!(アシリパさん談)」である白石由竹は戦闘力など皆無・・・に見えるも、牛山をして「油断できない妖怪」と言われています。
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誰が強いか?というよりも、どうやって生き残るか? 生き延びて血反吐を吐くか? そういったことに焦点が当てられているゴールデンカムイの戦闘シーンでした。

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伊勢神宮参拝 2017年 夏 (回顧録)

※2017年8月の内容になります


なにごとの おはしますをば  しらねども


かたじけなさに なみだこぼるる


西行法師


西行法師。
本名・佐藤義清。元武家で歌人。僧侶。同僚に平清盛がいる。
「北面の武士」というエリートで流鏑馬の達人。歌も蹴鞠も一流の腕前。また容姿端麗と言われている。
しかし、エリートコースを捨て、1140年に22歳の若さで出家。



西行法師はいわゆる「聖人」ではありません。その煩悩、迷い、心の弱さを素直に「歌」に込めています。「悟り」の世界に強く憧れつつ、現世への執着を捨てきれず悶々とする中、宮廷ではなく山里で花や月に心を寄せ歌を詠んでいた西行法師。上の歌は西行法師が伊勢神功を訪れた時のものです。これは内宮・五十鈴川をはさんで遠目に見た時に詠んだ歌です。


長きにわたる伊勢神宮の歴史において一般人や僧侶の参拝が禁止されていた期間が長くあります。あの五十鈴川の対岸の「こちら側(外界)」にある、大鳥居の外側から一般人も僧侶も参拝していました。 現代では五十鈴川を誰もが簡単に渡っていますが、これが許されなかった時代も有り、むしろその方が長かったのです。


伊勢神宮は、本来的には「個人の参拝を想定してない」聖地であります。

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さて、伊勢への参拝はこれで4度目ほどになるでしょうか。本来ならば1泊2日くらいかけてゆったりと参拝できればよかったのですがそういうわけにもいきません。

今回はスーツを着ていきました。「御垣内参拝」のためです。
近鉄伊勢市駅に到着し、外宮に向かいます。外宮に着いていきなりの御垣内参拝ですから緊張します。ズラリと並ぶ御朱印受付の列を横目に、隣の受付で遷宮の御奉賛をさせていただき、その御礼として参宮章を受け取ります。それをもって外宮の正宮へ・・・・。


暑さなのか緊張なのか、汗がダラダラと流れます。


正宮入ってすぐの宿衛屋にて神官に取り次いでいただき、御垣内参拝へ。


「日本人なら訪れる価値のある聖地」くらいの認識でしたが、そんな俗っぽいものではなかったです。色んな意味で「あそこは行ってみるとイイ」なんて安っぽくお勧めする気にもならない。パワースポットなんて底抜けに馬鹿げた表現は口が裂けても言いたくはない。


心の底から生かしていただいている感謝を奉納することができたのだろうか。この年まで生かされてきた姿を見せるのが精いっぱいでした。 今となっては、何も見えてなかったように思います。世界、宇宙の広さを感得することのできない矮小な自分がそこにあったかと。
小さな窓から覗いている、そんな感じです。


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外宮の後、「伊雑宮(いざわのみや/いぞうぐう)」へ参拝。
内宮、外宮以外ではもっとも訪れるべき場所と言われる。
近鉄伊勢市駅から賢島行きの普通に乗り、40分ほどのところ。もちろん無人駅。



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伊雑宮の後は内宮へ。

内宮でも御垣内参拝をさせていただきました。外宮と内宮では雰囲気が多少異なりますが、緊張は変わらずです。汗も止まりません。正宮を出ましたが、あの一瞬の緊張感だけが残っています。光景はあまり記憶にありません。


多くの人は五十鈴川にかかる宇治橋を、服装も構わず、行楽地へ遊びに行く時のように気楽におしゃべりしながらお参りしています。夏なので短パンで手足をむき出しにした若い人も多いです。それなりの服装を心掛けないと不敬になりそうな気もしますが、この有難さは分からないでしょう。私も「なんとなく」のレベルなので説明できませんし、そこまでする義理もありません。


スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式祝辞で述べたコメントの一部です。


>何故なら、ありとあらゆる物事はほとんど全て…外部からの期待の全て、己のプライドの全て、屈辱や挫折に対する恐怖の全て…こういったものは我々が死んだ瞬間に全て、きれいサッパリ消え去っていく以外ないものだからです。そして後に残されるのは本当に大事なことだけ。

と述べています。
人生のいろいろなガラクタ(お金、家、土地やプライド)は死んだ瞬間にすべて無になる。
御垣内参拝にて思ったのは「無」。


すべてを手放す。お金、立場、しがらみも、飼っている生物、趣味の品、武道すら気持ちよく、未練なく手放す心持ちの準備が必要な時期に来たのかもしれませんね。

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参拝の後は直会(なおらい)の神人合一ということで、「白鷹」を有難くいただきました。とろけそうに美味です。
きりっとしたところはないけれど、「米」を思わせるズブっとしたとろみが後を引きます。


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「ゴールデンカムイ」 若さとは? 家永カノ篇 [ゴールデンカムイ]

ヨガとか太極拳とか何とか呼吸法とか、アンチエイジング目的でやっている人も多いです。


ただ、形をなぞるだけではダメで、呼吸であるとか、軸であるとか、姿勢、歩き方、そういったことが大事ですね。何よりも「心が前向きになること」現在進行形で学び、励むことで「若さ」が後から付いてくる・・・そんな感じです。熱中している間は心身の時間が止まっているとも言えます。

最初から「アンチエイジング!」では、得られるものも得られません。「最高だった過去の自分」にしがみついていては、それは永遠に手に入らないのです。



さて、その「若さ」ですが、ここはひとつ「ゴールデンカムイ」も絡めて講釈を垂れていきましょう。

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”同物同治に執心するホテル主人@家永カノ”

本名:家永親宜(イエナガチカノブ)
職業:医者→ホテル経営
属性:嗜虐性を帯びたカニバリズム&異性装
年齢:69歳・・・という推測あり
その他:絵画が好きなど、教養の高さがうかがえる
モデル:アンドレイ・チカチーロ&佐川一政&「H.H.ホームズと迷宮ホテル」と言われている

佐川の「佐」ってイ・エ・ナだよね?という考察もあり。

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網走監獄に収監時代の家永カノ。
当時からやたら「若いジジイ」として知られていた。



「同物同治」とは中国の考え方の一つで、体の中の不調な部分を治すには、調子の悪い場所と同じものを食べるのがいい、という考え方。 肝臓の悪いときには、牛、豚、鶏などの肝臓を、胃の病気のときは胃を、 心臓が悪いときは心臓を、腎臓疾患のときは腎臓を食べると、回復に役立つということ。

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家永カノは「同物同治」に確たる信念を持ち、「最高の自分」に固執している。それは「最高の自分」に固執した結果の「同物同治」といえなくもない。科学の最先端たる西洋医術に精通した人間がたどり着いた先が東洋のオカルティズムという何とも奇妙な話であり、食人はその結果に過ぎないと思われる。

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脳みそは生姜醤油で「ズチャッチャッ」と食べるそうです。



脱獄後は「札幌世界ホテル」を乗っ取り、妖艶な美貌の女将に身をやつし、ホテルに施した隠し通路や仕掛けを使い、「欲する部位」を持った宿泊客に目星を付けてはガスで眠らせ地下室に監禁して拷問の末に殺害し、「同物同治」の餌食としていた。「美しい声」の宿泊客がくれば、その声帯を奪い、食す、という具合である。

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「私の身体に足りない物を他人から奪い続けるために」



今を生き延びるのための「食」ではなく、あくまでも自己の欲求を満たすための「食」である。「他人の身体」を使って若さと美貌を保っているといっても過言ではない。そういう点において野生動物を片っ端から狩猟して食するアシリパさんや杉元の「食」とは根本的に異なり、いわゆる「ヒンナ」の境地からは程遠い。



「女装」はおそらく、男性の見地から「若さ」と言うものを具体的に、視覚的にも体感的にも味わえる最高の方法の一つであると言える。
もちろん相手を油断させるためや篭絡させるためには有効な手段であるが、「同物同治」で若さと美貌を獲得している何よりの証拠となる。また、「女性」性は万物の豊饒な大地の象徴でもあり、豊饒性の顕現でもある。
すべてを所有し、また生み出すことができる生産力のイマジネーションである。

男の知識と感情を持ち、美を内包する性そのものとなった女、なのである。

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杉元一行よりも一足先に来ていた土方サイドの牛山辰馬。

さっそく家永カノを口説く。
女好きではなく、ただの色情狂で定期的に誰かを抱かないと不安定になる。




牛山に遅れてホテルに宿泊した杉元一行。アシリパさんの美しい眼に惹かれた家永カノが罠を仕掛ける。
彼らの宿泊部屋にガスを注入し、眠り込んだアシリパさんの眼を舐めようとしたところ、気配を察した杉元が無言で家永カノの頭部を蹴り飛ばす。

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「てめえ なんでアシリパさんの目ん玉舐めてんだ?」
ちなみにこの時点では家永カノが刺青囚人&男であるとバレていないので、逆に言うと、女性であっても危害を加えようとする人間には容赦がない杉元の徹底した姿勢である。

そして家永カノがホテルの女将ではなく、刺青の囚人&食人医者であることがバレる。

「若さ 強さ 美しさ。充実した生への渇望・・・。」
「結局ひとは無い物ねだり。欲深いです」

「でも見てください・・・」
「私は正しい」

「超」がつくリアリスト(戦争帰りなので余計に)であり、怒りに満ち溢れている杉元に「私は正しい」と宣言する事にどういう意味が在るのだろうか。先述した「同物同治」の効果の具体的証拠として「自分」を見せつけているともいえるが、実際に若く、そして強い、野生の獣ににも似た美しさを持つ杉元に対しての「老人」の嫉妬なのかもしれない。



もちろん杉元をして「自己暗示だろ?」と喝破されている。

「同物同治なんてそんな都合のいい話があるかよ

自己暗示だろ? 」
この瞬間、家永カノの表情が怒りに満ちる。小さな「パキッ」という効果音とともに目じりに皺がよるのだが、それは厚化粧、つまり「化けの皮」が剥がれかけた暗喩なのかもしれない。怒りは、自分のしてきたことへの「揺らぎ」の顕れを隠すため、といえる。本当は自己暗示なのかもしれない、と。

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杉元は続ける。

「だが……
たしかに
人間ってのは欲深いぜ」

「俺はてめえの刺青を引っぺがして持ち去るつもりなんだから」

アシリパさんに危害を加えようとした怒りもあるが、ここで「正義の名のもとに鉄槌を下す」のではなく、ある意味で同類であるというフォローとともに「お前も狙われる側だぞ」という示唆。このあたりの状況や立場のバランス感覚の描き方がすばらしい。

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怒りの杉元と発情中の牛山から逃げる家永カノ。
出血顔が妙に色っぽい。

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杉元と牛山を鉢合わせて戦わせる。
ギャグパターンも忘れない(笑)。



この後は酔いと発情で我を失いつつある「土方サイド」の人間である柔道家「不敗の牛山」や白石由竹とのドタバタ騒乱戦になる。家永カノはホテルを壊して逃げようとするが、その際、落下する梁に巻き込まれてしまう。梁の下敷きになり息も絶え絶えのところに通りがかった牛山に対し、

「牛山・・・・・・鍛え続けているあなたならわかるでしょ?」

「若い頃は力強くて美しかった」
「他人から奪ってまで最高の自分にしがみついたの」
「あなたの完璧はいつだった?」



状況こそ違うが、杉元には「自己の正当性」を主張したのに対し、牛山には「心の揺らぎ」を告白している。
元・職業軍人である杉元とは違い、牛山は武道家である。「強さ」という、これもまた戦いの螺旋の中で追う者・追われる者の立場であり、「若さ」にも似て盛者必衰の理より逃れることは出来ない。「若さ」と「強さ」に執心のある者同士、一種の共感を得たのではないかと思われる。

そう。あまりに美しすぎる若き時代を過ごした者は、若い頃の自分に復讐されるのだ。

すべてを比較する意識。他人との「比較心」。 他人を見て比べての自己判断。自分自身を見つめることを拒否。
ひがむ心、復讐する気持ち、不公平感・・・・それらを捨てきれなかった哀しき老人に過ぎなかったのだ。


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家永カノは牛山に救出され、土方サイドに加わることになる。
以降「牛山様」と呼ぶようになるが、二人の仲は・・・?


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杉元の脳外科手術の際にどうやら「つまみ食い」したらしく、
思考パターンが顕現している。


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「ゴールデンカムイ」  オソマとヒンナ [ゴールデンカムイ]

「『うんこ』と『美味しい』というアイヌ語を強制的に覚えさせる漫画」


これが「ゴールデンカムイ」である。

ゴールデンカムイ @野田サトル  集英社/週刊ヤングジャンプ連載中(2014〜)
『マンガ大賞2016』大賞受賞作
『第22回手塚治虫文化賞・大賞』受賞作

「オソマ=うんこ」で「ヒンナ=美味しい」だ。


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ヤマシギのオハウ(鍋料理)。ヤマシギはフランス料理では高級食材である。



エンターテイメント作品としての出来は素晴らしいが、印象としては「10年後も(再読して)はたして面白いのだろうか?」という疑問があり、単行本の購入は戸惑っていた。しかし、おそらくオソマやヒンナなど、そういったアイヌ語は間違いなく覚えていると思われる(笑)。

私は本格的に立ち読みし始めたのが「姉畑支遁(あねはたしとん)篇」。
「これってあきらかに獣姦だよね?」

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モデルはシートン動物記のアーネスト・シートン+ムツゴロウらしい

一般誌でここまでオモシロおかしく描けることにちょっと感動して読者と化し、単行本を買い始めた。


さて。
「うんこ=オソマ」であり、「美味しい=ヒンナ、ヒンナヒンナ」である。
ただし、本来的には「美味しい=ヒンナ」は誤用である。なんとなく雰囲気的に「美味しい」と解釈してしまっているが、




アシリパ「ヒンナヒンナ」

杉本「なんだい?それ」

アシリパ「食事に感謝する言葉」

アシリパ「私たちは食べながら言うんだ」

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このように「ヒンナ」は本来的には我々の「いただきます」に近く、「神に感謝して(食物を)いただきます」という意味であることに留意したい。

用法を間違うと一瞬で「にわか」とバレてしまう。


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アシリパさんは杉元の持っていた味噌のことを「オソマ(うんこ)」と思っており、料理に入れるのを頑なに拒んでいた。後に、味噌が入っている「桜鍋」を食し、味噌の美味さに気付く。でも味噌のオソマ呼ばわりはやめないのである。アイヌ料理は魚や獣の油脂、特定の植物が調味料としては一般的だったそうで。

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「桜鍋」を懸命に食しようとするアシリパさん。


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その味に目覚める。
しかし、オソマ呼ばわりはやめない。



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味を覚えたあと・・・杉元に、遠回しにねだる。
それでもオソマ呼ばわりはやめない。

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味噌と双璧をなすオソマである「カレー」を見たアシリパさん。
ちなみにエゾシカ肉のカレーである。


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これは、自分の憑神様へのお供えのアイヌの作法。

アシリパさんの反応もそうなのだが、杉元が「郷に入れば郷に従え」を素直にやる人物なのも好感度が高く、またそれが読者を異文化の疑似体験感を与えてくれるのだ。


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毒矢を使う理由も、たしかに理に適っている。
変顔が得意であるが、狩猟の腕は一級品である。
本作中における絶対強者である「ヒグマ」に対しては誰よりも知識と経験がある。



あの名悪役であるラピュタの「ムスカ大佐」をほうふつとさせる、インパクトのある悪役も忘れてはならない。


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「ゴールデンカムイ」に登場する怪人にして敵役・鶴見中尉。情報将校として情報収集能力や知謀が冴えわたる恐るべき人物でありながら、ユーモアがあり、カリスマ性のある人物。日露戦争において無能だった上官や中央を見限り、底知れぬ野望を秘め、北海道に軍事政権にを樹立させようと奮起。軍の上層部にもシンパがいる。

しかし、その真意はまだ不明。

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インテリ系サイコな強キャラであり、理想的上司?とも言われる。部下に無茶な命令や無意味な処罰をした描写はないが、造反者には容赦がない。
地元の有力者への金策や部下の見舞など、意外と苦労している感じの描写がその人気を支えている。

続きはまたの講釈で。

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日本の味噌って凄いんだね~と思わせてくれる。

プクサ=ギョウジャニンニクで、これは本当に美味しい。
刻んで入れれば、ただの家庭の焼き飯が中華料理の一品と化す。

デパートや高級系のスーパーで置いているところもある。
2,3月は栽培もの、4,5月は天然ものがメイン。




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