「からくりサーカス」 女性性の戯画化であるディアマンティーナ
アニメ「からくりサーカス」が終わって2週間ほど経ちました。
意見は様々でしたが、私は「上出来」としておきます。「名場面の切り取り」だけでしかなかったかもしれませんが、それだけでも十分に見る価値はあると思います。
モンサンミッシェルにおける「ナイアと勝」のやり取りは最高でした。
「O」とその本体たちの作画レベルが(悪い意味で)ヤバかったですが、ナイアの声優さんの奮闘で『死の恐怖から逃げた果ての人間』の惨めさを表現できたと思います。
「コロンビーヌの最期」の出来はもちろんです。
感動的なシーンではありながら、人形とはいえ、少女の生首を抱いて泣いているという、ある意味において不気味さもある場面。藤田テイストを遺憾なく発揮できました。
「パンタローネとハーレクイン」も満足でした。
さて、あまり取り沙汰されることのないディアマンティーナ。
特に最終話においては傑出した「異常な出来の作画レベル」でした。
もともと(ネットの拾い読みですが)ディアマンティーナは作画の平均レベルが安定し、作画崩壊していない数少ないキャラと言われています。もっとも、登場回数も時間も少なめですからそれは当然かもしれません。
最終話。
フェイスレスが持ち出した「パーフェクト・あるるかん(仮称)」の作画がもうトホホなレベルだったんですが、この時にすでに予感しておりました(苦笑)。
「・・・思い切って”ディアマンティーナ”に全振りしたに違いない・・・」
そしてディアマンティーナが登場。
最終局面においてフェイスレスにとっての「最大にして最高の皮肉」となる場面では、作画が恐ろしいほどに高まっていき、フヂタのテイストを生かした、アニメならではの作画演出でディアマンティーナを描き切ったと思います。
作画がクライマックスにむけてドンドンドンドン密度を増していく様は観ていて鳥肌モノでした。
人形とはいえ、愛に狂った、キ〇ガイじみた貌。
フェイスレスに解体され、パーツが崩れていくグロテスクなシーン、
これ以上ないほど、です。
作画班の奮闘ぶりは本当に素晴らしいの一言です。
『・・・私のこと、愛してる?』
『でもね、本当はこう言って欲しいのよ。エレオノールよりも愛してるって!』 『いやいや、それよりエレオノールの元となったフランシーヌよりも愛してるって、言ってぇ??」
この作画レベルで顔が動くのですから、ものすごいインパクトがあります。
表情を変えずに見つめているフェイスレス。
密度の濃いディアマンティーナの作画とは対照的に空虚な感じの作画が、「最大の皮肉」を味わっているフェイスレスの心境をよく表している。
「・・・さすがは僕が作ったオートマータだな。でもね。僕が別の人を愛する自由だってあるんだよッ!!」
『フェイスレス様ぁ!! 酷い、こんなに、愛してるのに・・・!!』
『愛シテ、クレナイ、ナンテ・・・・・・』
分解されながらもナイフを拾い、フェイスレスに突き立てます。
愛が手に入らないと分かると、その相手を殺そうとします。
フェイスレスがやったこととまったく同じことを再現します。
ただ、勝とのやり取りとディアマンティーナの台詞から、すべてを理解したのか、
「・・・仕方ないだろう?」
と返答するのです。
以下はディアマンティーナに対するひとつの感想ですが、上手くまとまらなかったので、流して読んでください。
フェイスレスが作った最後の人形である「最後の四人」には、それぞれフェイスレスの性質が盛り込まれています。ディアマンティーナは仮にも女性型人形であり、「最古の四人」のコロンビーヌと対になるように、とは思いますが、それだけではないと思います。
ディアマンティーナの最大の特徴のひとつに、
「”くまちゃん”を生み出して、使役する」ことがあります。
通常のくまちゃん、爆弾くまちゃん、透明な巨大くまちゃん等があります。
それらはディアマンティーナがスカートを少し捲り上げるとボタボタと落ちてきます。
スカートをめくり上げると、そこから生まれてくる。
フェイスレスは何を思って、これ以上ない「女性」性をディアマンティーナに盛り込んだのでしょうか。
ディアマンティーナはゴスロリ調の後期型コロンビーヌと類型の子供型ボディで製造されています。
子供型ボディであるにもかかわらず、その能力はくまちゃんを生み出してそれを武器にします。
おのれの美貌のために「生き血のお風呂」に入るという冷酷さ。
嫉妬深さ。
コロンビーヌに対して「旧式のクセに」と侮りつつも、作られてからの時間の浅さにコンプレックス。
そしてフェイスレスにどうインプットされたか分からない「愛」とやらに盲目的であり・・・。
スカートを捲り上げる仕草は女性性器を見せる暗喩であり、その中にあるモノは、言葉を借りるのならば、
『男性社会を堕落へと導く「地獄の口」、あるいは生命と豊穣を司る「天国の門」』。
女性性器は本来、生命を生み出す神聖で畏れ多い存在ということで古代から洋の東西を問わず、それらは神聖視され、それが年代を重ねると女性の性器や性欲は汚らわしいとか堕落の象徴とされるようになります。
フェイスレスは好きな女性の代替品として最高クラスの人形である「フランシーヌ人形」を作っています。だが、それは「笑わない」という理由で放棄。「ダッチワイフ」(性の対象)にすらなりえませんでした。
作品中でもフェイスレスは女性型人形をあまり作りません。
フランシーヌ人形(実在の女性がモデル・高性能)
コロンビーヌ初期型(道化として製造。後にフランシーヌ人形に意識を与えられる)
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アプ・チャー (大人の女性型・真夜中のサーカス工房製?)
ヘア・ツイスター (同上)
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コロンビーヌ後期型(初期型を改造・ゴスロリ)
ディアマンティーナ(久々のお手製・ゴスロリ)
フランシーヌ人形2(大人の女性型・量産タイプのおもちゃ)
コロンビーヌは大人の女性からゴスロリ人形に。そして同型のディアマンティーナを作り、それには様々な「女性性」を盛り込みました。幼女に子供を産ませるという悪趣味。
ディアマンティーナには、これ以上ないほどの女性性のカリカチュアライズ(戯画化)がなされていると思います。それも結構な悪意をもって。
フェイスレスの名言のひとつ「Dreams come true」。
少年誌とは思えない(笑)。
ディアマンティーナに敗れ、破壊されたコロンビーヌの手。
後にフェイスレスに分解され、同じような目に遭うディアマンティーナ。
ディアマンティーナはこんな風になってしまった手でナイフを拾い、造物主(フェイスレス)を刺すのです。
私としては、アニメ「からくりサーカス」を堪能出来て良かったです。
もっと多くの人に原作を読んでもらいたいですね。
前半はあんまりオモシロクナイですけど(笑)。
あとはコロンビーヌとディアマンティーナ、あるいは「最古の四人」と「最古の四人」を立体化待ち。
高くて買えないだろうけど(苦笑)。
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