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「ゴールデンカムイ」 若さとは? 家永カノ篇 [ゴールデンカムイ]

ヨガとか太極拳とか何とか呼吸法とか、アンチエイジング目的でやっている人も多いです。


ただ、形をなぞるだけではダメで、呼吸であるとか、軸であるとか、姿勢、歩き方、そういったことが大事ですね。何よりも「心が前向きになること」現在進行形で学び、励むことで「若さ」が後から付いてくる・・・そんな感じです。熱中している間は心身の時間が止まっているとも言えます。

最初から「アンチエイジング!」では、得られるものも得られません。「最高だった過去の自分」にしがみついていては、それは永遠に手に入らないのです。



さて、その「若さ」ですが、ここはひとつ「ゴールデンカムイ」も絡めて講釈を垂れていきましょう。

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”同物同治に執心するホテル主人@家永カノ”

本名:家永親宜(イエナガチカノブ)
職業:医者→ホテル経営
属性:嗜虐性を帯びたカニバリズム&異性装
年齢:69歳・・・という推測あり
その他:絵画が好きなど、教養の高さがうかがえる
モデル:アンドレイ・チカチーロ&佐川一政&「H.H.ホームズと迷宮ホテル」と言われている

佐川の「佐」ってイ・エ・ナだよね?という考察もあり。

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網走監獄に収監時代の家永カノ。
当時からやたら「若いジジイ」として知られていた。



「同物同治」とは中国の考え方の一つで、体の中の不調な部分を治すには、調子の悪い場所と同じものを食べるのがいい、という考え方。 肝臓の悪いときには、牛、豚、鶏などの肝臓を、胃の病気のときは胃を、 心臓が悪いときは心臓を、腎臓疾患のときは腎臓を食べると、回復に役立つということ。

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家永カノは「同物同治」に確たる信念を持ち、「最高の自分」に固執している。それは「最高の自分」に固執した結果の「同物同治」といえなくもない。科学の最先端たる西洋医術に精通した人間がたどり着いた先が東洋のオカルティズムという何とも奇妙な話であり、食人はその結果に過ぎないと思われる。

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脳みそは生姜醤油で「ズチャッチャッ」と食べるそうです。



脱獄後は「札幌世界ホテル」を乗っ取り、妖艶な美貌の女将に身をやつし、ホテルに施した隠し通路や仕掛けを使い、「欲する部位」を持った宿泊客に目星を付けてはガスで眠らせ地下室に監禁して拷問の末に殺害し、「同物同治」の餌食としていた。「美しい声」の宿泊客がくれば、その声帯を奪い、食す、という具合である。

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「私の身体に足りない物を他人から奪い続けるために」



今を生き延びるのための「食」ではなく、あくまでも自己の欲求を満たすための「食」である。「他人の身体」を使って若さと美貌を保っているといっても過言ではない。そういう点において野生動物を片っ端から狩猟して食するアシリパさんや杉元の「食」とは根本的に異なり、いわゆる「ヒンナ」の境地からは程遠い。



「女装」はおそらく、男性の見地から「若さ」と言うものを具体的に、視覚的にも体感的にも味わえる最高の方法の一つであると言える。
もちろん相手を油断させるためや篭絡させるためには有効な手段であるが、「同物同治」で若さと美貌を獲得している何よりの証拠となる。また、「女性」性は万物の豊饒な大地の象徴でもあり、豊饒性の顕現でもある。
すべてを所有し、また生み出すことができる生産力のイマジネーションである。

男の知識と感情を持ち、美を内包する性そのものとなった女、なのである。

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杉元一行よりも一足先に来ていた土方サイドの牛山辰馬。

さっそく家永カノを口説く。
女好きではなく、ただの色情狂で定期的に誰かを抱かないと不安定になる。




牛山に遅れてホテルに宿泊した杉元一行。アシリパさんの美しい眼に惹かれた家永カノが罠を仕掛ける。
彼らの宿泊部屋にガスを注入し、眠り込んだアシリパさんの眼を舐めようとしたところ、気配を察した杉元が無言で家永カノの頭部を蹴り飛ばす。

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「てめえ なんでアシリパさんの目ん玉舐めてんだ?」
ちなみにこの時点では家永カノが刺青囚人&男であるとバレていないので、逆に言うと、女性であっても危害を加えようとする人間には容赦がない杉元の徹底した姿勢である。

そして家永カノがホテルの女将ではなく、刺青の囚人&食人医者であることがバレる。

「若さ 強さ 美しさ。充実した生への渇望・・・。」
「結局ひとは無い物ねだり。欲深いです」

「でも見てください・・・」
「私は正しい」

「超」がつくリアリスト(戦争帰りなので余計に)であり、怒りに満ち溢れている杉元に「私は正しい」と宣言する事にどういう意味が在るのだろうか。先述した「同物同治」の効果の具体的証拠として「自分」を見せつけているともいえるが、実際に若く、そして強い、野生の獣ににも似た美しさを持つ杉元に対しての「老人」の嫉妬なのかもしれない。



もちろん杉元をして「自己暗示だろ?」と喝破されている。

「同物同治なんてそんな都合のいい話があるかよ

自己暗示だろ? 」
この瞬間、家永カノの表情が怒りに満ちる。小さな「パキッ」という効果音とともに目じりに皺がよるのだが、それは厚化粧、つまり「化けの皮」が剥がれかけた暗喩なのかもしれない。怒りは、自分のしてきたことへの「揺らぎ」の顕れを隠すため、といえる。本当は自己暗示なのかもしれない、と。

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杉元は続ける。

「だが……
たしかに
人間ってのは欲深いぜ」

「俺はてめえの刺青を引っぺがして持ち去るつもりなんだから」

アシリパさんに危害を加えようとした怒りもあるが、ここで「正義の名のもとに鉄槌を下す」のではなく、ある意味で同類であるというフォローとともに「お前も狙われる側だぞ」という示唆。このあたりの状況や立場のバランス感覚の描き方がすばらしい。

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怒りの杉元と発情中の牛山から逃げる家永カノ。
出血顔が妙に色っぽい。

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杉元と牛山を鉢合わせて戦わせる。
ギャグパターンも忘れない(笑)。



この後は酔いと発情で我を失いつつある「土方サイド」の人間である柔道家「不敗の牛山」や白石由竹とのドタバタ騒乱戦になる。家永カノはホテルを壊して逃げようとするが、その際、落下する梁に巻き込まれてしまう。梁の下敷きになり息も絶え絶えのところに通りがかった牛山に対し、

「牛山・・・・・・鍛え続けているあなたならわかるでしょ?」

「若い頃は力強くて美しかった」
「他人から奪ってまで最高の自分にしがみついたの」
「あなたの完璧はいつだった?」



状況こそ違うが、杉元には「自己の正当性」を主張したのに対し、牛山には「心の揺らぎ」を告白している。
元・職業軍人である杉元とは違い、牛山は武道家である。「強さ」という、これもまた戦いの螺旋の中で追う者・追われる者の立場であり、「若さ」にも似て盛者必衰の理より逃れることは出来ない。「若さ」と「強さ」に執心のある者同士、一種の共感を得たのではないかと思われる。

そう。あまりに美しすぎる若き時代を過ごした者は、若い頃の自分に復讐されるのだ。

すべてを比較する意識。他人との「比較心」。 他人を見て比べての自己判断。自分自身を見つめることを拒否。
ひがむ心、復讐する気持ち、不公平感・・・・それらを捨てきれなかった哀しき老人に過ぎなかったのだ。


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家永カノは牛山に救出され、土方サイドに加わることになる。
以降「牛山様」と呼ぶようになるが、二人の仲は・・・?


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杉元の脳外科手術の際にどうやら「つまみ食い」したらしく、
思考パターンが顕現している。


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