発表会というもの

先日、通っているダンススタジオの発表会を観てきた。前回は参加したが今回は観客席である。

発表会と云うのは、(一般の会員視点からすれば)それなりに厄介なモンである。出たら出たで、お金もかかるし時間も必要だ。特に時間を確保するのが大変で、それが半年続く。１回抜けると遅れた分を取り戻すことに負担を感じてしまうが、実際はそう問題なく取り返すことができる。心理的な問題。また、クラスのレベルによっては、その時間が苦痛に感じてしまうことすらある。これはだいたい参加者同士共通してくるようで、レッスン待ちの時間は、発表会が近づくにつれて雰囲気が暗いことが多い。

※このあたりBALLET・JAZZ系とSTREET系ではまた異なってくるのが面白い


なので、発表会が終わった時の解放感たるや、ものすごいものがある。この１０分のためにやっているといっても過言ではない。

一方、出ないなら出ないで、その半年間をどう過ごすか、がちょっとした問題になる。少なくとも私はダンスを始めてから常に感じている。とはいえ、上手い人で、なおかつ時間がそれなりに確保できる人ならば、別にそのまま発表会に出るクラスに居続けたって問題はない。
私のように中途半端で、どうしてもフリ覚えが悪いと、その居心地の悪さたるや、とても耐えられない。なので、発表会に無関係のクラスか、ある程度こなせるレベルのクラスで過ごす。
特に発表会の１、２か月前はもっとも難民な時期なので、臨時休会することもある。

※私の場合は月でランダムに3～５回の出席なので、どうしても覚えにムラがあり、発表会に出る場合と出ない場合では覚え具合が比べ物にならない。おまけに、私の都合で行けるクラスの幅が狭くて難儀している。


このあたり、初級者が離れてしまう原因のひとつであろうことは簡単に予想がつく。ダンススタジオのネックでもあるだろう。それでも発表会を行うのは、利潤を得るとか、広報宣伝であるとか、そういったことだけでなく、ダンスが単なるエクササイズではなく芸術表現であることを示すためにも必要な行事なのだろう。

参加費がだいたい５万(何クラス出場しても変わらない)。
※参加申し込み書といっしょに渡されるチケットを手売りして回収すれば云々という建前はございますが、それは云わないお約束。

単純に計算すると参加する人が９０人だと４５０万である。借りる会場のキャパが1000人ほどと大きい。さらに当日だけでなくリハでも借りる。音響照明その他諸々で、けっこう費用が掛かるのが解る。もっとも、そのあたりはもう会員同士でもあまり詮索していないし、他所から入会してきた人とちょっと話題になる程度だ。

それはさておき、けっこうな参加費であるが発表会と云う場をお膳立てしてもらい、なおかつフリや構成を考えてくれて、それなりの要望にも沿ってくれる。それが発表会までの半年続く。その対価として考えると決して高くはない。

さまざまな欲求や自我を満たす意味でもなかなか楽しめるのだが、そう、「ダンスはエクササイズ」ではないという確認の意味は大きい。私はフィットネスクラブではダメな人間だ。つまらない。レッスンも受けたが、面白くない。何より雰囲気がダメだ。このあたりはまた突っ込んで書いてみたいところなので今回は省く。

ダンスは、意識で身体を支配し、意図的に物質化した身体を駆使するエクササイズではない。なにより、意図的に管理し動かそうとすると、とても間に合わないのだ。
究極的にいえば、芸術以前に、身体が自然に動いていく「作法」である。いや、自然に動いていく･･･ように見せる「コツ」なのかもしれないが。

また、これは人によって受け取り方は異なるとは思うが、舞台上の、あきらかに現世とは異なる雰囲気は言い表し難い。別世界であり、異次元である。不思議なものだ。物性を超えて空間に溶け込んだ体感は一瞬でしかないが、もう一度味わってみたい気持ちが再び舞台へと立つ意欲となっている。

ラストの演目を舞台袖から眺めてフィナーレを待っている時の胸の内も何とも云い難い。ネバーランドが終わる寂しさか、解放のカタルシスか、あの瞬間の、皆の表情だけは本当に写真に収めておきたい。



とは言ってみたものの、もはやダンスが上手くなることではなく、ダンスを続けることが目的になってはや何年。コンスタントに通わないユーレイながら古参会員の部類に入ってきたなぁと思う今日この頃。